腎臓内科(腎センター)
当科の特色
当科では、近年概念として確立された慢性腎臓病(CKD))の、腎炎から透析療法に至るまでの慢性疾患の有する幅広い病態に応じた加療と、急性腎不全や急速進行性腎炎および急性血液浄化療法などに対する急性期の加療に力を入れています。また、2009年4月より泌尿器科と共に腎センターを構成し、両科協力体制の下に主に末期慢性腎不全および腎移植に対する集約的な治療を行っています。
慢性経過を辿る慢性腎臓病は、多様な病態を有する患者の増加に伴い、薬剤選択、貧血の改善や栄養面でのサポートといった多面的な加療がますます必要となっているため、長期的なフォローにはかかりつけ医や専門科との病診連携、役割分担が不可欠であると考えられます。このため、当科を含めた埼玉県南部地区の腎臓内科医でCKD連携協議会を組織し、定期的に学術講演会などを開催して近隣医との病診連携および併診のお願いをすることで、透析などの腎臓病の末期段階への進行を食い止める活動を続けています。また栄養指導の重要性を鑑み、当院病診連携室の協力のもと、医師の診察なしで栄養指導のみを繰り返し何度でも行っていただけるシステムを構築し、近隣医へのご案内を進めています。
慢性腎臓病の一大疾患であるIgA腎症に対しては、2020年度も引き続き当院耳鼻科と連携して扁桃腺摘出+ステロイドパルス療法を積極的に施行し、臨床的な尿所見の改善および寛解維持などの効果を実感しています。また、腎生検は近年30-50件で一定数の症例に施行させていただき、腎炎および腎障害の診断を行っています。今後も腎臓病の治療方針に対する病理診断からのアプローチとして重要視していく方針です。
また腎不全の患者さまでも、慢性腎臓病から透析への導入を少しでも遅らせるために、2012年から外来診療の中で看護師、栄養士、薬剤師および理学療法士と共にさまざまな角度からの指導チームを作り、一人ひとりの患者さまのサポートに当たっています。ここ数年の当院での維持透析の新規導入件数は、年度による変動はあるものの40-70名ほどで推移しており、これを一人でも減らせるように今後も多種職による患者さまへの関わりをより一層深め、その効果の評価をしていこうと考えています。一方で、透析を開始する必要のある患者さまに対しては、開始時から安定した透析を行えるよう透析療法の工夫や他臓器の合併症を評価し、長きに渡る維持透析の生活をより快適に過ごせるようにサポートいたします。同時に維持透析を行っている過程で起こるさまざまな合併症にも対応し、特に透析ブラッドアクセストラブルに対する経皮的シャント拡張術(PTA)は年間50-80件程度を継続的に行っています。今後もできる限り、積極的なPTAのアプローチによるブラッドアクセス開存率の確保・向上に努めたいと考えています。
腎移植に関しては、慢性腎臓病保存期の段階から患者さまとよく話し合い、可能であれば透析導入前に当院泌尿器科に相談し、スムーズな移植医療へのバトンタッチを行っています。また、移植後のレシピエントおよびドナー患者さまに対しても、外来で腎機能を含めた長期的なフォローを行っています。
また近年、末期腎機能障害の患者さまの腎代替療法の治療選択は、これまで血液透析に偏っている状況が長く続く中で、多様化する患者のニーズに合わせた治療選択肢を示すことが求められています。当院では、昨年より慢性腎臓病患者さまを対象に療法選択外来を開設し、血液透析だけではなく、腹膜透析や腎移植も治療選択の一つであることを知っていただき、最終的に患者さまご本人の意思が100%反映できるような治療を達成することを目指しています。
患者さまへのメッセージ
腎臓病は一般的に症状が出にくく、また出現する場合はその症状は多彩です。さらに、他の病気と一緒に悪くなることもありますので、受診のご相談を含めて何かご心配ご不明な点がございましたら、当院腎センターまでお気軽にお問い合わせいただければと思います。
