病気・疾患

直腸がん

直腸がんとは

大腸は食べ物が最後に通過する腸管で有名な「盲腸」から始まり「上行結腸」、「横行結腸」、「下行結腸」、「S状結腸」と続き、肛門直前の大腸を「直腸」といいます。
大腸の部位

大腸がんの中で直腸にできたがんを「直腸がん」といいます。

直腸がんを含む大腸がんは食生活の欧米化などに伴い近年増加傾向にありますが、比較的ゆっくりと進行するため、手術を中心とした適切な治療を行えば治癒が期待できます。しかし、離れた部位に転移すると根治(完全に治ること)が困難となります。

進行するまで無症状の患者さんが多いため、「大腸がん検診」の受診が重要です。

大腸がんのほとんどは「腺がん」で、まれに「扁平上皮がん」「腺扁平上皮がん」などがあります。その他の腫瘍として「神経内分泌腫瘍(NEN)」「間葉系腫瘍(GIST)」「リンパ腫」などがあり、手術を中心としたさまざまな方法で治療を行います。

症状

進行するまでは自覚症状はありません。
がんが進行すると、

  • お腹にしこり
  • 血の混じった便、黒い便
  • 便秘、下痢
  • 細い便
  • 腹部の痛み、張り
  • 食欲不振、体重の減少
  • 貧血症状(だるさ、息切れ、動悸、顔色が悪い)

などの症状が出ることがあります。
しかし、進行がんでも無症状のこともあります。

検査と診断

大腸がんが疑われた場合には、下部消化管内視鏡(大腸カメラ/ファイバー)検査を行い、組織の一部を採取し顕微鏡で確認することで、診断を確定することができます。

大腸がんは、血液やリンパ液の流れにより転移を生じることが知られているため、必要に応じてCT検査やMRI検査などで画像診断を行います。

病期(ステージ)

病期とは、病気がどの程度進んでいるか(進行度)を示すもので、治療方針を立てる上で重要な判断材料となります。大腸がんの治療を決める因子は下記の3つが用いられ、これらの状態により病期が決まります。
  • 大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるか(壁深達度:T因子)
  • リンパ節へ転移しているか(リンパ節転移:N因子)
  • 他の臓器へ転移しているか(遠隔転移:M因子)

表1 壁深達度(T因子)

Tis癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない
T1a癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 未満である
T1b癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 以上であるが固有筋層に及んでいない
T2癌が固有筋層まで浸潤し、これを越えていない
T3癌が固有筋層を越えて浸潤している
漿膜を有する部位では、癌が漿膜下層までにとどまる
漿膜を有しない部位では、癌が外膜までにとどまる
T4a癌が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って腹腔に露出している
T4b癌が直接他臓器に浸潤している

表1:大腸癌研究会「大腸癌取扱い規約 第9版」金原出版(2018)p10より引用

表2 リンパ節転移(N因子)

N0
リンパ節転移を認めない
N1
腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が3個以下
N1a転移個数が1個
N1b転移個数が2~3個
N2腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が4個以上
N2a転移個数が4~6個
N2b転移個数が7個以上
N3
主リンパ節に転移を認める
下部直腸癌では主リンパ節および/または側方リンパ節に転移を認める

表2:大腸癌研究会「大腸癌取扱い規約 第9版」金原出版(2018)p15より引用

表3 遠隔転移(M因子)

M0遠隔転移を認めない
M1遠隔転移を認める
M1a1臓器に遠隔転移を認める(腹膜転移は除く)
M1b2臓器以上に遠隔転移を認める(腹膜転移は除く)
M1c腹膜転移を認める
M1c1腹膜転移のみを認める
M1c2腹膜転移およびその他の遠隔転移を認める

表3:大腸癌研究会「大腸癌取扱い規約 第9版」金原出版(2018)p15より引用

表4 病期(ステージ)

大腸がんには0期からⅣ期までの病期が存在します。
壁深達度が進むに従い、病期が0期からⅡ期へと変わっていきます。
リンパ節に転移があると病期はⅢ期に、遠隔転移があると病期はⅣ期となります。
遠隔転移
M0
M1
M1aM1bM1c
リンパ節移転
N0N1
(N1a/N1b)
N2aN2b,N3Nに関係なく
壁深達度
Tis0
T1a・T1bⅢaⅢaⅢb
T2Ⅲb
T3ⅡaⅢbⅢc
T4aⅡbⅢc
T4bⅡcⅢc

表4:大腸癌研究会「大腸癌取扱い規約 第9版」金原出版(2018)p19より引用

治療

0期(早期がんの多く)からⅠ期(一部の早期がん)では、下部消化管内視鏡(大腸カメラ/ファイバー)による治療で完全に治癒することができます。

Ⅰ期の一部からⅢ期に対する治療の中心は手術です。状況によって化学療法(抗がん剤治療)をお勧めすることもあります。

Ⅳ期は化学療法(抗がん剤治療)を中心とした治療を行い、症状緩和などの必要に応じて手術を行います。

手術療法

進行大腸がんに対して根治が期待できる唯一の治療法です。
手術の方法として、主に以下のものがあげられます。

A.開腹手術

最も古くから行われてきた手術のため、標準手術と言えます。比較的短時間で施行可能であることが利点ですが、患者さんへの負担がやや大きいことが欠点と言えます。直腸がんの開腹手術

B.腹腔鏡手術

開腹手術よりも患者さんの身体への負担が少ないことが大きな利点です。腫瘍の性状(極端に大きいなど)や患者さんの状態(腹腔内の癒着など)により困難となる場合は適用できないことが欠点です。直腸がんの腹腔鏡手術

C.ロボット支援手術

ロボット支援による直腸がんの手術は2018年から保険適用となりましたが、さまざまな条件があり保険を適用できる医療機関は限られています。戸田中央総合病院では保険診療として直腸がんに対するロボット支援手術が可能です。

当院は、直腸がんに対して2022年から「ダビンチサージカルシステム(以下、ダビンチ)」(米国Intuitive Surgical社)を用いたロボット支援手術を行っています。「ダビンチ」はより精密な手術ができることなどが利点です。しかし、腹腔鏡手術や開腹手術に比べて手術時間が長くなることなどが欠点です。

「ダビンチ」について、詳しくは下記をご覧ください。
戸田中央総合病院での直腸がんのロボット支援手術が保険適用に!「ダビンチ」のご紹介

直腸がんのロボット支援手術

D.下部消化管内視鏡(大腸カメラ/ファイバー)による治療

肛門から内視鏡を挿入し腫瘍を切除します。
対象が早期がんの一部に限られますが、患者さんへの負担が少ないことが利点です。

いずれの手術方法にも利点、欠点が存在するため、患者さん個々に適した手術を選択することが重要です。

当院では、①安全性、②確実性、③低侵襲性(患者さんへの負担が少ない)、④整容性(傷痕がきれい)の優先順位を守りながら、患者さんに最適な手術をご提案します。

化学療法

抗がん剤は血管の中を流れ全身に行き渡るため、がんの転移した場所に関わらず効果が期待できます(ただし、防御機構がある脳には薬剤は到達しません)。
そのため、手術で取り除けないような期の大腸がんに対して適した治療方法であり、余命を伸ばす効果が確認されています。しかし根治できる可能性は高くありません。
Ⅲ期の大腸がんでは、手術の前後に抗がん剤治療を行うことにより、再発を抑えることが期待できます。

ほとんどの患者さんは、抗がん剤の副作用について不安を感じていますが、大腸がんの抗がん剤治療で用いる薬剤は種類が多くあり、個人差はありますが、副作用をほとんど感じない患者さんもいます。当院では患者さんと相談しながら、さまざまな抗がん剤の中からその方に適した治療法をご提案します。

放射線療法

直腸がんの一部と転移したがんの一部に行います。腫瘍を小さくしたり、痛みを和らげたりする効果が期待できます。ただし、根治できる可能性は高くありません。

免疫療法

当院では、健康保険が適応となる免疫チェックポイント阻害薬を用いた治療を行っています。ただし、大腸がんで効果が見込める方は全体の10%未満であるため、特殊な検査を行って効果が見込める方に対してのみ行う治療です。

健康保険が適応とされていない免疫療法は臨床研究として他の医療機関で行われていますが、その効果は不確定のため当院では行っていません

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